俺は晴れ男!
俺が雨男かよ!
小布施へGOだっ
温故知新とは
紅葉とカレー
予定先は予想外
初乗り、初飛び
寝坊と野獣肉
猿だ鰻だ心太だ
 
 

田牛のサンドスキー場『猿だ、鰻だ、心太だ。すんげぇ長い一日だよ』


ずっと以前から日帰りで伊豆半島を一周したくて、色々と計画を立ててはいたんだ。東伊豆は何度となく走しったし、西伊豆は何度か、とば口までは行った事はあった。でもバイクでも一日で走り切るには結構厄介な土地だ。どうしても走りたいなら一年で一番昼の時間が長い季節に行って走りきるしか方法は無い。しかしその季節は関東では梅雨の真っ只中だ。何回も雨で流れ、次の年、次の年と先送り。この年も2度ほど雨で流れて、都合がついたのは俺とナッカーの2人だけ。お馬鹿二人組だ。

東名道・東京IC入口のマックで待ち合わせ。流石に『朝マック』の『ハッシュドポテト』は体が受け付けない年になったようだ。気温もそろそろ上がり始める頃、俺はRG500ガンマ、ナッカーはゼファー1100のエンジンをスタートさせ、東名道の本線へと駆け上がる。今日の天気は晴れ。俺たち2台は快調に東名道・厚木ICから小田原厚木道路へ入る。この道はネズミ捕りで有名だから大人しく走る(普段から大人しいんだよ)。すでに混み始めてる料金所を抜けたところでナッカーが「スピードメーターのケーブルが外れた」と言って修理をはじめる。しかしスペック製のカウルを装着してたので作業に難儀してた。俺はそれを見てカブリ気味のプラグの交換をはじめた。俺らがカウルやタンクを外すもんだから走ってる車から視線が集まっていた。どうにか作業は無事終了。しかしここで困った事が起きたんだ。手がホコリと油で真っ黒になっちまった。辺りを見て回るが水道なんか無い。こんな手でグローブはをはめるのは勘弁だよ。そこで奥の手を使うことにした。俺のガンマは負圧キャブじゃなくてレーサー風の自由落下式のキャブだからホースを外してコックを開くとガソリンが流れてくる。そのガソリンで手を洗ったんだ。んーワイルド。ちょっと手がピリピリして周り一体ガソリン臭くなっちゃった。でもれしか方法が無かったんだよね。ご免なさい。

俺らは何事も無かった様に小田原厚木道路を終点まで乗り、箱根湯本を抜け、何時ものように山崎ICから箱根新道へ入った。ターンパイクは通行料が高いから一度も走った事無いんだね。箱根新道は全体的に日陰の場所が多く、冬場に走ってとんでもない目に合った事がある。箱根峠から熱海箱根峠線で伊豆スカイライン方面へ。この道は細くて路面もあんまり良くないけど、何時もワクワクしてしまう(冬場はワクワクしないけどね)。それはこの先の伊豆スカイラインからの眺めが素晴らしい事を知ってるからなんだ。

伊豆スカの料金所を抜けると、きつめの上り坂があり、上りきると左コーナーが待っている。「それ来たー! 絶景だ」 亀石峠までは尾根を走る区間が長いので気持ち良い走りが出来る。免許を取り、バイクを手に入れて、ツーリングに行き始めた頃は伊豆スカか奥多摩ばっかり走ってた気がするよ。

亀石ICを過ぎると少し道が悪くなる。亀石ICの辺りは訪れる度に何かしら新しい建物が増えてる気がするぞ。実はこの先を走るのは初めてなんだ。いつもは亀石ICを出て亀石峠を攻めていたから、どんな景色があるのか楽しみ。そして道は下りのコーナーが続く様になる。いつの間にかスカイラインがすぐ後ろまで迫って来ていた。どうやら地元ナンバーのようだ。こういう時は譲るに限るから、ガンマを車線の左に寄せて「はいよ」とバックミラーを覗くとスカイラインがいない。 「???」 突然右の対向車線からスカイラインが前に出て来て、ナッカーと俺を抜きに掛かる。 「マジッ! この先、左のブラインドだぞ!」 巻き添えは真っ平だから俺は大慌てでブレーキングして逃げた。前を走るナッカーも焦ってブレーキングしてたよ。でも何事も起きる事は無くスカイラインはコーナーの向こうに消えて行った。いくらカーブ・ミラーが有るからって無茶するよなー。

伊豆スカイラインを冷川ICで出て、天城湯ケ島方面へ向かう。随分前からガソリンがリザーブになってて不安だった(手を洗う時に使いすぎたかな?)。 中伊豆町の農協が経営してるスタンドで給油。間に合って良かった良かった。ありがとう日曜日に営業してくれてて。田舎を走ると日曜日に休みのスタンドが結構多くて困った事が何回か有ったからね。

国道414を南下する。先程までの伊豆スカイラインは山の上を走る。今は山の中。もうすぐ天城峠だ。旧道を走る案もあったけど、時間を稼ぎたかったので有料の天城トンネルへ。そのまましばらく走ってると、道が高架になり随分高いところを走ってる。この先が『河津のループ橋』だ。そのループ橋はグルグル回って面白いけが、車の助手席やバイクのタンデムシートに乗ってるのなら、グルグル回る景色も楽しいかもしれないけど、運転してる者にとってはずっとコーナーの出口を見てるだけでちょっとつまんないかも。首都高の小菅ICを強力にした感じかな。

対向2車線の道が広くなり、山々も少し離れていく。もうすぐ下田だ。伊豆急下田の駅前にはペリーが来航した時に乗船してた『サスケ・ハンナ号』のミニチュアがオブジェで飾られていた。その近くにZephyrとガンマを止め、タクシーの運転手に情報を得に行った、そう朝飯のね。しかし情報を得ることに失敗だ。こんな朝っぱらから営業してる店なんか無いそうだ。またやっちまった!。俺らは朝早く、それもムチャクチャ早くから行動してるから、体内時間と実時間のズレがあったんだよね。よく見ると改札から出てくる観光客、まだ眠そうだもん。たまにやるんだこういうミス。

腹が減って仕方がない、下田市内で二手に分かれ店を探す事に。駅前で言われた通り、何処の店も閉まってる。遠くでナッカーが手を振る。どうやら店を見つけた様だ。その店は一杯飲み屋というか小料理屋みたいな店のようだ。おばあちゃんに声を掛けたら、「家で良ければどうぞ」と言われたらしい。俺らは喜んでおじゃました。魚の干物を焼いた物とみそ汁(伊豆半島は麹味噌を使うらしい。昔、伊東で飲んだ時もそうだった)とご飯、それと生卵。その生卵が凄い、殻がツルツルなんだ、一体何日冷蔵庫に入ってたんだろう?これは結構ヤバそうだぞ。でもこれから先何処で飯を食えるか見当も付かない。俺はこの先腹を壊して後悔するより、今の満足を取った。生卵を割り、ご飯にかけて食べ始る。するとナッカーも意を決した様にご飯に卵をかけ食べた。店の外で卵の事を聞いたら、一目見てヤバイと思ったけど、俺が食うのを見て、腹をくくったそうな。おばあちゃんは何度も旅人に食事や泊まるところの世話をしたらしい。お世話になりました。ありがとうございました。そうそう俺もナッカーもこの先腹の具合がおかしくなる事は有りませんでした。

サンドスキー場前の道外は夏真っ盛りの暑さだ。でも俺らの一日は今からが本番。名も知らぬ道を抜け『田牛のサンドスキー場』へと向かった。周りは海水浴客ばかり、俺ら二人はやたらと浮いてる気がするぞ。ナッカーはすたこらと海岸へ降りていく、俺は暑さに負けそうだから、その辺りの日陰に避難した。特になんて事は無かったらしいが、ここが目的地ならそれなりに面白そうだったらしい。次は『波勝崎』に野生の猿を見に行く。ここの猿は有名で一度は見てみたかったんだ。

国道136号で南伊豆から遂に西伊豆へ入る。『マーガレットライン』とも呼ばれる道らしいが季節違いでそんな風情は一切無いし、男2人のツーリングには全然似つかわしくない。波勝崎は正式には『波勝崎苑』と言うらしい。入口は道路脇にあるが、野性猿の生息地は坂を下りきった海岸にあるらしい。 売店にはレトリバーがいて、お出迎えしてくれた。坂の右手に大きな檻が備え付けられていた。看板には『悪戯したり作物を盗んだりした猿たちが入って・・・』と書いてあった。 「おいおい、野性の猿じゃないのかい?」 海岸へ到着すると、そこにも檻があって、今度はその中には人が何人か入って外を見てた。猿が怖い人がその中に入って猿を見る為の物らしい。まるで『猿の惑星』の逆動物園状態だ。

「帽子・眼鏡は外してください・・・。財布・バッグはしっかりと手で持ってください。猿たちが狙ってます」というアナウンスが繰り返し流れていた。ナッカーは帽子を脱ぎ、眼鏡を外した。その為、何にも見えなくなり空いてる椅子にボーっと座るしかなかった。観光客が餌を与える事は固く禁じられていたので、日光の猿よりはマシみたいだ。ただ注意を猿から外してよそ見してると、ソッと近付いて来て、空きあらばと狙ってる姑息な奴がいた。子供の頃に親戚が飼っていた猿にやられた経験を持つ俺は、今一楽しくない。何も見えないナッカーは尚更楽しく無さげだ。

「もう、次行く?」 その次とは、共通の友人のエスさんに頼まれたお土産を買いに『田子』という町に向かう予定。そこで塩辛を買うそうだ。俺は知らないけど、かなり有名な物らしい。喉がすごく渇いてきたので、その町で水を買うつもりでいた。再び『マーガレット・ライン』を走り、西伊豆町の田子へ到着。田子は小さな小さな町で、その用事が無ければ訪れる事は無かっただろう。ナッカーが塩辛を買ってる間に俺はスーパー・マーケットを見つけた。ガッビーン!「閉まってるじゃないか」 ガラス越しに見える店内にはペット・ボトルが並んでいた。「真っ昼間だぞ!何で営業してないの? この町の人は日曜日に買い物をしないのかい」 開いてないものは仕方が無い。自販機でジュースを買って、お茶を濁したぞ。(何だ、そりゃ)

土肥金山の少し手前に『心太(トコロテン)』の幟がはためくドライブ・インを発見。「これこれ、酸っぱくて冷たいトコロテンで喉を潤そう」ナッカーを追い越し、左ウィンカーをチカチカさせて、半ば強引にドライブ・インに連れ込んだ。しかしトコロテンは俺が思っていた物とは違っていた。黒い甘酢がかかっていた。「えー何で! 関西じゃあるまいし」 でも買ってしまったからは食わなきゃ勿体無い。泣く泣く食べましたよ。甘くてべっとりとしたトコロテンを。俺の前に買った男の人はトコロテンに七味を何度も振りかけ、大量の辛子を乗せてたぞ。それってトコロテンの食い方じゃないだろう。味覚破壊起こしてないかい。

口の中に不快感を感じたまま土肥金山へ到着。建物の中は冷房が効いてて、発熱物体と化していた俺らはやっと一息つく事が出来た。土肥金山そのものは特に大した事も無く、「う〜ん」ていう感じかな。冷房で体が冷えてくると外に出たくなくなる。外は強烈な日差しで目が痛くなるほどだよ。でも最終目的地の三島まではまだまだ距離がある。その三島で『鰻』を食う為にはもう一走りも二走りもしなければならない。『高足蟹』で有名な戸田漁港を過ぎたら時間を短縮する為、ルートをショートカットして内陸へ向かう。真城峠を抜けて清水市の西浦へ辿り着いた。清水市といってもまだ駿河湾を挟んだ伊豆半島側だ。朝っぱらから、余りにも長い時間そして余りにも長い距離を走ったもんだから、500ガンマの重いクラッチを握り続けた左手首と超前傾姿勢をとり続けた腰が爆発寸前。峠道の辛かった事辛かった事。

俺がまだVFR750Fに乗ってた頃、真冬に真城峠を走った時、エアーガンを持った人が何人も森の中にいて「サバイバル・ゲームをやってるんだ」と思っていたら本物の猟師でエアーガンじゃなくて散弾銃だった。伊豆中央道の料金所で痛みは限界に達した。道路に寝転がり、腰を伸ばそうとするが、熱せられたコンクリートはまるで焼けたフライパンの様で背中を火傷するかと思う位熱かった。伊豆中央道を走り切ると最終目的地の三島だ。訪ねる店の名前は『うなよし』 どうやら道に迷って駅前に出たらしい。三島の人は車やバイクが走ってても関係なく平気で道を渡る。気を付けないと危ないよ。

『うなよし』は地元でも有名な店らしい。俺たちは広い駐車場に500ガンマとZephyr1100を止めた。メニューには特上・上・並の3つがあるが、鰻の枚数と御飯の量で区別してるらしい。特上はラーメン・ドンブリの化け物みたいな丼で出てくる。そんなのは絶対無理だから、無難に並みの鰻丼を注文。ナッカーも並を注文した。でも何故か鰻重。相変わらず臍が曲ってるようだ。そして一日中走って汗をかいた体の為にキンキンに冷えた麦酒を少々。並の鰻丼でも丼から鰻がはみ出す位ボリュームがある。腹が減りまくってた俺らは貪るように食ってしまった。ところで昼は何を食べたんだっけ? 朝っぱら伊東で食ってからトコロテン以外食ってない気がする。余りにも暑くて記憶が飛んだかも。

食い終わって腹一杯になった俺たちは駐車場でボーっとしてた。店内で見かけていた地元のライダー2人が話し掛けてきた。「これから東京ですか?ガチガチですね ガチガチとは? 意味は分からないけど、言いたい事は何となく分かった。でも俺らよりもとんでもない奴がいたぞ。そいつはHONDAのレブルに2人乗りして店に現れたカップル。まずはナンバーが練馬。行く途中なのか帰る途中なのかは知らないけど、三島⇔東京間を下道で往復移動してる事になる。3万キロ近く走ってるバイクに5年間の自賠責保険が付いてて、まだ4年半ほど残ってる。無茶だよ、バイクが持たないって、そんな乗り方してたら。

時間は午後6時半を回ってる。朝5時に待ち合わせだから、もう13時間半も一緒に居る。ひえー!何て長い一日なんだ。今から東京へ向かうんだもんな。ガチガチですぜ。東名道の沼津ICから入り一気に東京を目指す。予想通り御殿場から先は大渋滞だ。ずーっとずーっとすり抜けをし、目が疲れきり、手の痺れが最高調に達してもまだ高速の上だ。走ることが無意識の行動になった頃、ようやく東京の端っこに着いた。まだまだ長いぞ。環八・甲州街道・環七もブタ込み。ヘロヘロになって自宅前へ。ツーリング先で買い漁ったお土産を手にドアを開けると、俺と何時も一緒に居る『お土産大好き』な人が一言。「だんな、臭い」 トホホ、そりゃ無いよ。でも今日はすげぇん長い一日だった。起きてから約19時間も経ってるからね。


この日のお馬鹿達の足跡。

東名道・東京IC→小田原厚木自動車道・厚木IC→平塚IC(ガソリンで手を洗う)→小田原西IC→国道1号→箱根新道・山崎IC→熱海箱根線→伊豆スカイライン→冷川IC(降りる)→伊東修善寺線→伊東西伊豆線→国道414号・下田街道(天城トンネル・河津ループ橋)→下田(朝飯)→国道136号→名も知らぬ道(田牛サンドスキー場)→国道136号・マーガレットライン(波勝崎・野生猿)→田子(スーパー休み・シオカラ)→西伊豆町(トコロテン)→土肥町(土肥金山)→沼津土肥線→修善寺戸田線→真城峠(腰痛)→沼津土肥線→伊豆中央道→国道136・三島市(鰻丼)→東名道・沼津IC→東名道・東京IC→環八→国道20号・甲州街道→環七



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