『THE AMBULANCE/アンビュランス』

1990年アメリカ 日本では劇場未公開。

監督 LARRY COHEN/ラリー・コーエン。

出演 ジョシュア  ERIC ROBERTS/エリック・ロバーツ。

    スペンサー JAMES EARL JONES/ジェームズ・アール・ジョーンズ。

    マロイ    MEGAN GALLAGHER/メガン・ギャラガー。

ラリー・コーエンは『マニアック・コップ』の監督で、エリック・ロバーツはジュリア・ロバーツの実兄。ジェームズ・アール・ジョーンズは怪演を見せてくれるしB級好きには垂涎物の作品です。

イラストレーターのジョシュア(ちょっとメル・ギブソン似)はオフィスへ向う途中、何度か見かけていたキャリアウーマンへ近づきいきなり「独身ですか?」と声を掛ける。キャリアウーマンは急いで立ち去ろうとするが、突然体調を崩しその場に倒れてしまう。

「早く救急車を!」と叫び近寄るジョシュア、予想外の早さで救急車が到着する。*「私はシェリル。糖尿病なの」とだけ彼女は言い残し救急車は走り去る。出社したジョシュアは今朝の事が気になり仕事を早退し病院へ見舞いに行くがシェリルは何処にも入院していなかった。

シェリル失踪の捜査依頼のため33分署のスペンサー警部補に面会するが不審者扱いにされてしまう。落ち込むジョシュアにスペンサーの部下で女性のマロイ巡査(何となく雛形あきこ似)が話し掛けてくるがやっぱり相手にされなかった。

シェリルはとある場所でベッドに縛られたまま目の前の男からこう告げられていた。**「豚のすい臓の切片を特殊な膜で包み、移植すれば糖尿病は完治する。そして完全な体で君は死ぬのだ、3日後に」

シェリルの全然似てない似顔絵を手にし探し回わるジョシュアは偶然に街でシェリルのルームメイトに出会えた。(やっぱB級はこうでなきゃ)ルームメイトも糖尿病患者で、「助けて!今夜8時半にディスコ“ステーブル”で待ってる。」というシェリルからのメッセージが留守電に入っていたことを話した。

二人はディスコへと向った、ディスコは静まりかえっていた。***ルームメイトは一人で入口へと歩み寄って行き(一人で行かせるなって)、店内へと入りドアを閉める(何で閉めるの)。店内から助けを求める声が、慌ててドアへと駆け寄るジョシュア、店内からドアを破り救急車飛び出して行く。

何が凄いかって、若い女性の糖尿病患者を狙って連れ去るという設定にビックリ。それも次々と患者が現れ次々とさらわれる。ルームメイトも偶然同じ病気という設定なんて、アメリカじゃ生活習慣病を通り越して蔓延してるのかと思ったくらい。

*救急車に乗せられる時救急隊員じゃなくて、何故赤の他人のジョシュアに持病の事を言うのか?。**『豚のすい臓を特殊な幕で包んで・・・』なんて全然意味不明です。***一度事件を目撃しているのにあまりにも無用心過ぎる。でもこれがB級映画なんです。

2度も事件に巻き込まれ疲れ果てたジョシュアは自宅のデスクで眠りに落ちていた。寝起きに、*手元にあったマグカップを口にし飲み干した、すると突然の腹痛に襲われアパートの住人に大声で助けを求める。救急車が到着した、しかしジョシュアは犯人グループがやって来たと思い必死で抵抗するが意識を失ってしまう。

病院のベッドで目を覚ましたジョシュアの前にはスペンサーが立っていて事の顛末を話す、救急隊員は本物だった。鎮静剤を打たれ安心して眠りに落ちるジョシュアにその夜、本当の魔の手が伸びてきた。

犯人グループは警官と救急隊員を装い病院へと潜入する。夜勤の看護婦(またもや糖尿病患者)を殺害しジョシュアの病室へと侵入して拉致しようとするが隣の患者が不審に思い騒ぎだし失敗に終わる。

その患者はニューヨークポスト社の元新聞記者でイライアスという名前のとても病人とは思えない元気な老人だった。

特ダネの臭いを感じたイライアスはジョシュアを連れ出しニューヨークポストへと向う。(二人とも病人だろ?)**たどり着いた二人の目の前には例の救急車が停車していた。

スペンサーへ知らせる為ジョシュアは電話ボックスへと向う、残ったイライアスは証拠写真を写すため救急車へ近づいていく、無人に思えていた車から屈強な男たちが降りてきた。イライアスは為す術べも無く連れ去られてしまう。電話を終えたジョシュアはその場へ戻るが残されていた物は1本のフィルムだけだった。

スペンサーは独自の捜査とジョシュアの話から事件は真実だと確信し連絡のあった現場へと急行していた。前方から救急車がサイレンを鳴らし猛スピードで走ってくる。「例の救急車だ」と気付いたスペンサーもスピードを上げ救急車を追い始める。***救急車を止め尋問をはじめるが一瞬の隙を突かれスペンサーは殺されてしまい遺体はイライアスと供にどこかへ運び去られてしまう。

武器を持てない一般市民を主人公にしたミステリー映画に良く見られる手法で本人の意思とは関係なく次々と事件に巻き込まれる。そして身の回りに色んな人が現れては身代わりになっていく。

*どうしてコーヒーを飲んだだけであれほどの腹痛に襲われるのか一切説明無し。**何故ニューヨークポスト社に行く事が犯人たちに予測出来たんだろう。***殺害される時のジェームズ・アール・ジョーンズはそれはそれは見事な怪演を見せてくれます。

ついにスペンサーは現れる事はなかった。失意のままジョシュアはオフィスで深夜までデスクに向ってイラストを描いていた。そこに尋ねてきたのはちょっとセクシーな衣装のマロイ巡査。

*彼女は言う「スペンサー警部補は病欠の連絡があった日から行方不明になっている」と。ジョシュアは今までの経緯とイライアスが写した写真を見せながらもう一度話しをした。二人だけの捜査が始まる、手始めは例の救急車の持ち主を割り出すことからだった。

ジョシュアは車の解体業者から有力な手掛かりをつかむ、**喜ぶ彼の前に街のチンピラどもが何の意味も無く現れそして何の意味も無くジョシュアは襲われる。そこに犯人が運転する救急車がサイレンを鳴らし近寄って来た。

救急車に乗せられ連れ去られるジョシュアは必死で目の前に置いてあるバッグ(何で置いてある?)をつかんで中身を引っ張り出す、中から出てきたものは“VINT”というネーム入りのブルーの制服だけ。絶体絶命のピンチの中、救急車の後部ドアを蹴る!蹴る!蹴る!ドアが開いた。***覚悟を決めタンカごと外へと飛び出す。

脱出は成功したかに思えたが異変に気付いた犯人は車を止め後を追う。ジョシュアはセントラルパークの給水所へ逃げ込みどうにか追っ手をまくことに成功し再び外へと飛び出した。

偶然にもそこは別の殺人事件の現場で(これまたB級)、現場検証をしていた刑事たちに事件の目撃者として運良く保護される事となった。

このあたりから物語が迷走をはじめます。クライマックスへ突入する直前に盛り上げのリズムを作ろうとするが、映画自体が訳が分からなくなり始める。*警部補クラスが行方不明になったら一般人にはそんな情報は言わないだろう。**何のためにチンピラが現れてジョシュアを痛めつけるのか?、その後犯人グループに全員叩きのめされるのか?このシーンが有る理由がわかりません。***一度失敗してるんだから絶対逃げられないよう工夫すればいいのにって思ったよ。(でもそれはあまりにもリアルすぎるというか現実主義過ぎるけどね)

犯人グループはすでに12人もの糖尿病患者を実験台へと送っていた。*イライアスは実験の意味を聞かされ心には怒りと恐怖が渦巻いていた。

**ジョシュアから犯人グループに拉致されかけたという話を聞いたマロイはジョシュアが救急車の中で見たという“VINT”のネーム入りの制服が“VINTAGE”というディスコの制服である事を偶然に突き止め単身その店へと乗り込む(何で一人で行くかね)

店内には例の救急車が飾られていた。それを見たマロイはここが犯人のアジトだと確信する。

33分署に連絡するが同僚のマクロウスキー刑事は話を信じずに電話を切ってしまう。その刑事から尋問を受けていたジョシュアはマロイを助けるため「俺は殺人犯の顔を見ている。二人組みの救急隊員でそのディスコに居る」と嘘の証言をし刑事たちをそのディスコへ向わせる事に成功した。

ディスコの客に扮していた犯人の一人はマロイが警官である事を見破り殺害しようとする、マロイはピストルを発砲し反撃する、店内はパニックに陥った。そこへ刑事たちとともに警官隊が到着した。次々と逮捕される犯人グループ。***しかしボスは騒ぎに乗じ救急車で脱出する。

マロイは不審なドアを見つけ2階へと登ってゆく、そこは行方不明になっていた人たちの助けを求める声が渦巻くフロアだった。

やつれ果てたシェリルを見つけるとジョシュアは「君を探してニューヨーク中駆け回った。命を何度となく無くしかけたよ。僕に出来る事あるかい?」と優しく声を掛ける。シェリルは言う「彼に、ボビーに連絡して欲しいの。」全てが一方的な恋はあっさりと終わった。

そしてイライアスも無事保護された。(ところでシェリルのルームメイトは?)

ここでもまたB級映画の都合よさが炸裂する。*警部補のスペンサーは殺されたのに何故か糖尿病患者でもないイライアスを生かしておくのか不思議。一応劇中で最後の切り札で取ってあるとの説明は有るけどそれも意味無し。**危険だと分かっているのに何故か誰にも知らせず単独行動をする。“VINT”は初め人名だと思い犯罪者名簿を調べるがコーヒーをこぼした瞬間に“VINTAGE”という店の名前だと閃く。初めから“VINTAGE”と刺繍されていても良かったのでは。***このシーンですごくちゃっちいカーアクションとガンアクションがある。そしてイライアスも病人とは思えぬ活躍を見せ犯人逮捕に一役買う。

いきなり場面は変わり夜のニューヨークの街を走るリムジンの中に祝杯をあげるジョシュアとマロイがいた。

シャンパンを飲み交わす二人はお互いの魅力に気付く、ジョシュアはマロイをファーストネームのサンディーと呼ぶようになっていた。グラスを重ねるうちに“あのねのね”の『つくばねの唄』のような会話を交わしだす。

リムジンを止め自分のアパートに誘うジョシュア、それに答えるマロイ。新しい恋がはじまるかに思えた時猛スピードで救急車が近づいて来た。犯人のボスの最後のアタックだった。

マロイは激しく弾き飛ばされる、その勢いでバックしてきた救急車にジョシュアも弾き飛ばされ怪我を負ってしまう。

必死で逃げるジョシュア、それを追う救急車。

ジョシュアは袋小路に追い込まれ行き止まりのフェンスによじ登る。

恨み言を山のように言いながらボスはアクセルを力いっぱい踏み込む。猛スピード走る救急車はでフェンスを突き抜け向こう側へ飛び出してしまう。フェンスの向こう側はビルの工事現場で深い穴が掘られていた。

落下した衝撃で大きな炎を上げ爆発する救急車、崩れ掛けのフェンスに捕まり難を逃れたジョシュアはあまりの凄さに呆然としてしまう。

鳴り響く緊急車両のサイレンの中、タンカに乗せられたジョシュアは救急車へ運び込まれる。そこには怪我を負ったマロイの姿があった。

生きている喜びを噛み締めながら無事を確かめ合う二人はキスをしようとするがお互い身動きが取れずにキスが出来ずじまいで物語りは終わる。

これほどB級映画のエッセンスがいたるところに散りばめてあるのに何故日本では劇場未公開なんだろう。

ハッキリいえることは事件のはじまり方や敵の手からの逃れ方があまりにも突然であまりにもわざとらしい。犯人がまだるっこしい方法でしか攻めてこなかったり、危機一髪の状態の時ほど警備が薄かったり人数がひどく少なかったりする。

まるで連続ドラマの総集編のように場面が次々と変わりアイデアを詰め込みすぎて制作側も見てるほうも何が何だか分からなくなって来る。

そして一番致命的なのが劇中に時間軸がひとつしかない事だと思う。違う場所で二つのストーリーが同時進行することが無く、時間を進めたり遡ったりする事も無い。主人公のジョシュアの時間軸のみを中心として物語が前へ前へと進んで行く事。

それは解説だけでこんなに長いページになってしまった事でも分かってもらえると思う。でも初めてこの映画を見た時はドキドキ・ワクワクしながらTVの前にいたんだ。もと上手く伝えられればとも思うけど、それは人それぞれだから。

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