2002-5-12 『陽だまりのグラウンド』 HARDBALL

2週続けてヒューマンタッチの映画を見に行くとはね。この映画は見に行く予定じゃなかったんだけど、いつも俺と一緒にいる『キアヌ』大好きな人が「もうチケットも買ってあるの」と言い出した。「それなら予定変更で見に行くか」と映画の街、有楽町へと向かった。

キアヌ・リーブス演じるコナー・オニールは酒びたりの毎日を過ごし、スポーツギャンブルで大借金を抱えたドロップアウトの寸前の男(こんな役を演じさせるとすごく上手い気がする)。友人で証券会社のエグゼクティブのジミー・フレミングが提案した、リトルリーグのコーチの報酬に目が眩んでその仕事を引き受ける。『キカンバス』という野球チームの子供たちは低所得者が住む町アーチャー、所謂スラム街で育ち、同じ年頃の子供が車やバイクのエンジン音で車種を言い当てるように、遠くから響いてくる銃声から、そのピストルの機種や口径を言い当ててしまう。日常的に身の危険を感じ、時には命の危険さえ感じていた。しかしグラウンドにいる間だけは別世界にいるようなかけがえの無い時を過ごすことが出来た。

そこに現れた新しいコーチのコナーに子供たちは興味を覚え、自分たちの事を次々と話し始める。今までのコーチのジミーとは何かが違うことを感じ取る。それは“コナーはこっち側の人間だ”というものだったのかもしれない。戸惑いながらもコナーは少年たちの名前を覚える事から始める。この出会いによってコナーは子供たちから多くのものを得、責任と約束を果たす事の素晴らしさを覚える。そしてそれが人生を大きく変える転機となる。子供たちもコナーと多くの時間を過ごすうちにほんの少し大人になる。

スポーツを題材にした映画の中でとりわけ多いのが野球物だと思う。大人のコーチとチームの子供たちの関係を描いたものは何本も有り、この『陽だまりのグラウンド』も同じような設定になっている、この映画がそれらと違うのは子供たちは初めから色んな意味で大人なんだ。そして大人のコナーの方が何時も何かから逃げようとしてる、周りが良く見えない男で、ある意味子供の様に描かれていて「へぇー」と思った。

コーチを始めてから2週間が経った頃、コナーと子供たちが通う学校の女教師のエリザベス・ウィルクス/ダイアン・レインが初めて出会い、お互い一目惚れする場面があるんだ。そのシーンの中で、開いたドアで頭をぶつけるカットがあったけど、それを見た時に「あれっ」と思った。アメリカじゃドアは全て内側に向かって開くものだと思ってたけど、学校じゃ違うのかな。エリザベスは子供たちを大切に思っていた、その子供たちが信用したコナーだからエリザベスは彼の事を信頼したのかな。それとも自分が大切に思っている子供たちに親身になってるコナーだから信用したのかな。エリザベスは優しく落ち着いた役柄で、ロビン・ウイリアムス主演の映画『ジャック』でダイアン・レインが演じた、母親役に似た雰囲気を彷彿させていたと思う。同映画の教師役のジェニファー・ロペスみたいに野暮ったくなくて安心。流石は都会の先生かな。コナーとエリザベスの恋愛シーンがあっさり気味に描かれていたのも俺にとっては良かったかな。甘くてゆるい恋愛映画はどうも苦手なんだ。

現状から抜け出そうとして、一世一代のギャンブルに出たコナーとギャンブル仲間のティッキーと二人でバーの外から店内のテレビを見て一喜一憂するシーンは滑稽で笑えたけど、実際はあんなに上手くは運ばないよね。

子供たちを地元カブスのゲームに連れて行き、スタジアムへ入っていくシーンはなかなか感動的だった。光と空間の見事さを映し出していたと思う。そしてコナーがごまかしじゃなく、初めて自分から他人の為に行動した事にもね。まさにダフ屋のコナーの面目躍如かな。ゲーム前の練習時間にカメラを入れて撮影したのかと思っていたら、シカゴ市の協力もあって映画用にちゃんとエキストラを入れて撮影したと聞いて少し感心。

カブスの大打者サミー・ソーサーが子供たちの声援にスローモーションで振り返って手を振るシーンなんだけど、感動的で夢を見てるようなカットに作られていて、とても素晴らしいんだけど、ヘルメットのひさしとイヤーガードの影がサミー・ソーサーの顔に掛かっていて何となく亡霊が振り返ってるように見えて苦笑いしちゃった。

コーフィーがチームに復帰したくて、彼の弟のGベイビーがコナーとそれについて話をするシーンの字幕が一寸不満だった。Gベイビーは兄のコーフィーを“クライアント”、コナーはGベイビーを“エージェント”と呼んでいたから、そのままのほうが洒落てたと思う。

Gベイビーとコナーがいつもベンチで並んでいて、色々な話をする。Gベイビーは一番年下なのに一番大人びた口をきくんだ、コナーとの会話は見ていて心に響くものがあった。屑人間だったコナーにとって初めて一人の男として扱ってくれた存在なのかも知れない。そして子供たちにとっても自分たちの方をはっきりと見てくれた初めての大人だった。

そして最後にはそれまで大人の論理で生きてきたコナーが、自分が今一番大切に思ってる存在、チームメイトの立場になって行動をする。行きつけのバーの主人に「お前はあの子供たちの何を知ってる」と怒り。「ルールで決まっている」と言い張る相手チームのコーチに対して、年齢制限で試合には出られないが野球に対する愛情は深いGベイビーをあえて代打に送る。何時もヘッドフォンでヒップホップの『BIG POPPA』を聞いてないと何も出来ないマイルスの為に、一生懸命になってその歌を歌い、周りの観客を味方に付ける。でも踊ってるシーンはちょっと笑えたけどね。

地区優勝を掛けた試合のあたりは、編集もそれなりに凝っていてそこそこだったけど、ちょっと端折り過ぎの気がする。確かにコナーは新しいユニフォームを子供たちに渡すけど、それはバーの主人が寄付したのでは?。Gベイビーが代打に出たことに対して噛み付いてきた相手チームのコーチも勢いよく出てきたかと思ったら即引き下がるし。クライマックスに向けての事だろうけど、もう少し作りこんで欲しかったかな。

俺は年齢をごまかしていた為に野球を奪われ、ギャングになっていたジャマルが銃撃戦で死ぬのかと思っていたら、一番えぐい演出になっていて「そうきたか」なんて思った。

葬儀のシーンでのコナーの長いセリフとカット割り、そして映像の編集は見事だったね。もう少しで涙が出るところでした。

練習風景が殆んど描かれて無いのも良かったね。スポ根映画じゃないから。時間の進み方も思ったより速く、気にして見てないと、たった1ヶ月間の話に思えちゃうのは監督の意図かな。ダイアン・レインの出番が少なかったのが残念。出演カットは、学校の中・バー『スラッガー』の店内・グラウンドの横、これだけしか無いんだもん。

そして今回も目に付いた編集のミスと気になったところを。

子供たちと初めてピザ屋に行ったシーンで、飲み物を注文して(確かソーダと言ってたと思う)オーダーカウンターに飲み物が出てきた時は白い紙コップだったけど、テーブルに持って行った途端、ペプシの青い紙コップに変わっていたぞ。

マイルスのヘッドフォンを聞きながらの投球にクレームがついたシーンで、ヘッドフォンを外す前は塁上にランナーは居なかったのに、外した直後、そのバッターにホームランを打たれたら塁上にランナーが居たぞ。

新しいユニフォームの左腕のワッペンに『DUFFY'S』の文字が見えたけど、ユニフォームを寄付した男の店の名前は字幕では“バフィー”になっていたけど見間違いかな。DVDでも発売になったら確認してみよ〜っと。

『KEKAMBAS』はアフリカの部族の名前だそうな。HIT・RUN・SCORE・KEKAMBAS。何かこんなスローガンが少し前、日本のプロ野球チーム、それもパ・リーグのチームにあったような。

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