2003-3-1 『ロード・オブ・ザ・リング』 THE LORD OF THE RINGS
THE TWO TOWERS

超話題作を1,000円で見るというのは大変な事だった。チケットは前日に手に入れる事が出来たが、都合で最終上映の回じゃないと見に行けない。映画終了時には地下鉄と乗り継ぎが出来る電車は既に無い。途中からは歩きで帰るしかない。おまけに当日は冷たい雨が降り出した。「雨が降った休みの日は映画に限る」なんて言っててもこれゃ大変だ。予想通り劇場は満員だった。

プロローグや前作を振り返るカットなど一切無く、雄大な大自然をバックに映画は始まった。いきなり走る、走る。山道を登る、登る。ウルク=ハイ達を追う、追う。ストーリー的にも『THE FELLOWSHIP OF THE RING』から何の切れ間もなく続いている。第1部・第2部とか第1章・第2章と言った独立した映画じゃない事が見始めて直ぐ分かる。9時間の超大作を3つに分けて年一回のペースで上映してるんだ。こんな事今まで有ったのかな?

『THE FELLOWSHIP OF THE RING』のエンディングを見て、『THE TWO TOWERS』はフロドとサム。メリーとピピンを追うアラゴルンとレゴナスとギムリという2つのストーリで進むと思っていたら、3つ同時に進んでるじゃないか! 同じ時間軸の元にして多くのストーリーが進む映画は俺の大好きなパターンなんだ。見ていて飽きる事が無いからね。

ガンダルフが復活してアラゴルンとレゴナスとギムリ達の前に登場するシーンは予告編で流して欲しくなかったな。前半のハイライトの1つなのにもったいないと思う。そしてアラゴルンに“チェーサー”(『明日に向かって撃て』でブッチとサンダンスを追うインディアン)としての能力があったのには驚いたぞ。

今作のナズグルは翼を持つ獣に乗り空を飛んでいた。どう見ても龍としか思えない獣は、やはり西洋じゃ悪い生き物なんだね。中国では天子様の乗り物で、日本では湖や池の守り神で竜神様とか言われて祀られているのに。

元々は仲が悪かったエルフとドワーフ(レゴラスとギムリ)が何時も一緒に馬に乗っている、もう部族間のわだかまりなんか無くて、何時も一緒にいる真の仲間になっていた。そのギムリは今回はシリアスな物語の中で唯一の道化役だったね。それにしてもレゴラスは格好良過ぎる。馬に乗るカットには唖然としたぞ。

成り行きと好奇心で旅に付いて来た、サム、メリー、ピピンの3人は部族の事や上下関係を超えて世界の事を考えるまで成長していた。特にサムは弱気になるフロドを励まし守る。彼も一人の戦士になったようだ。前作は旅をする映画だったけど今作はもう一歩進んで成長する映画になっていたね。

ゴラムを最後まで「可愛い」とか「いい奴じゃん」と思う事は無かった。映画はまだ終わっちゃいないんだから気を許しちゃいけないのさ。

ホビットの庄やエルフの裂け谷は暖かく優しさに溢れていたのに対してローハンの王セデオンが住む黄金城は厳しい自然の中に孤高と建っていて、運命に弄ばれている人の生き様が見事に表現されていた。

圧倒的な迫力で迫る戦いのシーンは圧巻過ぎて時が経つのを忘れてしまった。こんな映像見せられると「これはもうファンタジー映画なんかじゃない。超スペクタクル映画だ」と心の内で叫んでしまった。スペクタクル映画の代表作とも言える『ベンハー』や『スパルタカス』等も場所と時代を歴史時代の中で設定してなければ立派なファンタジー映画なんだけどね。何だか卵が先か鶏が先かみたいな感じだ。画面に目と心を奪われていたから、1時間も続く戦いのシーンもあっと言う間に思えた。それにしてもアラゴルンは強い!そして不死身だ。本当に人なのかな?選ばれし人の運命はこれ位じゃ尽きる事は無いんだね。

現実に地球上で起こってる問題とダブらせてる映画評なんかも読んだけど、それは違う気がする。確かに映画を見て色々な事を考えさせられる事はある。でもそれで世の中の事を知った事にはならないからね。映画・絵画・音楽・小説という芸術作品にその時の時代背景が反映されているのは当たり前の事。それを今更のように言われてもね。現実の世界は受動的ではなく能動的に行動しないと見えて来ないことばかりだよ。

そして今作は多数の新キャラクターが登場した。ローハンではセデオン王、エオウィン姫、エオメル軍団長。ゴンドールではボロミアの弟のファラミア。ファンゴルンの森ではエントの木の髭。そしてモルドールの黒門に現れた華麗な装備の兵士達。特にエオウィン、エオメル、ファラミアの3人は登場の仕方の割りには活躍が少なすぎたから次回作へ期待だな。アラゴルンとアルウェンの回想シーンが長すぎの感もあるが、それも次の作品への伏線なんだろうか。

途中まで「これはCGかな?実写かな?」とか思いながら見ていたけど、そんな事が馬鹿馬鹿しく思える位だ。この映画は『CGが凄い』とか、『実写との区別がつかない』なんて言ってる作品じゃないし、これからはそれを話題や売りにする時代じゃ無くなると思う。この作品は俺にとって『映画を見る』時の心のあり方を変えた映画かもしれない。『スター・ウォーズ エピソード2/クローンの攻撃』の頃から何となくは分かってはいた事を確信に変えたんだ。CGで動くキャラに一人のエキストラ、一人の俳優としてしっかりと命が入っている事が分かったからね。

同じように、原作を読んでいたら「ここは原作と違う」なんて思いながら見る場面もあっただろうけど、見終えた時には、映画は映画。原作は原作だ。比べても仕方ないし比べるものじゃ無いときっと思っただろうな。

『THE TWO TOWERS』を見終えた時に「もっと見たかった」と思った。映画が終わりそうだと分かった瞬間、何故か悲しくなった。もっともっと見たかった。「このまま時が止まってれば良いのに」とも思った。見終わったばかりなのに次の『ロード・オブ・ザ・リング The Return of the King 』に対して期待が膨らんだよ。

最終電車で行ける所まで乗って、後は雨の中を歩いて家へ帰るまでの間、俺と何時も一緒にいる『映画大好きな人』と何度も『ロード・オブ・ザ・リング』の話をして盛り上がった。素晴らしい映画を見た後は心が満たされていて寒さも気にならなかったよ。

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