2003-2-1 『トランスポーター』 LE TRANPORTEUR

今日1日が、しょっちゅう見に行くシネ・コンのサービス・デーだと気付いたのは昨日の夜遅くの事。特別見たい映画は無かったが、折角だから何が上映中なのか調べて『トランスポーター』を見ることに決めた。入場券売り場に俺と何時も一緒にいる『映画大好きな人』と並んでいる時に、映画のタイトルを『トランスフォーマー』とか『トランスポッター』とか言って笑っていたらキップを買う時に本当に間違えそうになった。

オープニングのカー・アクションは予想以上の迫力でワクワクして見てた。高速や広い国道を使ってハイ・スピードで走るんじゃなくて、車一台がギリギリな路地や観光地のビーチ際を走るためハラハラ感もあった。一昔前はこのようなカー・アクションが繰り広げられる映画が数多く有ったのに最近は少なくてちょっと寂しかったんだ。

パトカーに追い詰められたフランク/ジェイソン・ステイサムが直角に交わっている下の道路を走っていた車を運搬するトレーラーに車ごとダイブするシーンには苦笑いした。どうやらこの辺りから“B級映画の神様”が顔を覗かせていたようだ。前後に積まれた車の間に何故か1台分のスペースが空いてるんだもん。その理由は、すぐ後のカットで分かるけど、普通はそんな風にはスペースは空けないでしょう。おまけに交差してる道路にはガードレールや欄干があって飛び出すのは無理なんじゃないか? そしてそんな凄いショックを受けたらトレーラーの運転手だって驚いて車を止めるって。

1.質問はしない。 2.依頼品は開けないそれがルールその2つのルールを破った時は死。えらく格好良い決めセリフだ。その“死”は自ら死を選ぶという事? それとも殺されても仕方がないと、自らが定めた事なのかな? その割には余りにも簡単にバッグを開けてしまったぞ。その為に爆弾を運ばされ、BMWが爆発した後の復讐の凄まじい事。自らが招いた事なのに・・・BMWを破壊された怒りの方が強かったようだ。逃げる際にベンツの配線を直結にしてたけど、ベンツでそれは無理だと思うよ。ハンドルロックもかかってると思うけどな。2つのルール以外にも『依頼主や届け先の名前も聞かない』というのもあったぞ。

依頼された荷物の中にいた、ライ/スー・チー(『ゴージャス』を見た時は少女だと思っていたけど、実は76年生まれと知って驚いた)を連れて家へと戻り、一晩明けるとそのライがマドレーヌを焼いていたのは笑った。器の中にインスタントラーメンと水を入れて電子レンジで“チン”して食ってるような食生活を送ってる男の部屋にマドレーヌを焼く為の型が有るとは到底思えない。おまけにレシピ本まで有ってビックリ!。イギリス人の元軍人がフランスのお菓子を作って食べる所なんか想像出来ないよ。インスタントラーメンの封を口で破るんじゃなくて、ナイフでサッと切った方が格好良かったと思う。

フランクの家をミサイルとマシンガンで破壊する辺りからどうやら“B級映画の神様”はどっしりと腰を落ち着けたようだ。2発目までのミサイルの飛び方は、この場合まずありえない。空中にいるヘリコプター等を熱追尾ミサイルで狙ってるんじゃないから、目標に向かって真っ直ぐ飛んで行くはず。3発目は真っ直ぐに飛んで行ったけど、ミサイルに口と牙が描かれていて、これも大笑い。襲撃から逃れて辿り着いた家はフランクの隠れアジトかと思って見ていたら、実は赤の他人の家。そこで結ばれなくてもいいだろうに。

フランクもライもそれぞれバックボーンがあって、それなりのカットやセリフで表現はされていたけど実際のところは何にも説明無しの状態と同じ。タルコーニ警部/フランソワ・ベルレアンが「お前の家はいつも片付いてるな」と思わせぶりに言う台詞の答えも無し。だけどこの映画にはそんなもの必要は無いとこの辺りで気が付いたよ。そのフランソワ・ベルレアンを見た時何処かで見た顔に思えて気になっていたんだ。答えは『ダイ・ハード』『ハリー・ポッター』に出演してるアラン・リックマンと単に鼻の形がソックリなだけ。気にしただけ時間の無駄でした。

バスの中でのアクションや倉庫で油まみれになるシーンには『お前はジャッキー・チェンかよ!!』と突っ込みを入れてしまった。油に濡れてテカテカ光るフランクはまるでフジTVの『めちゃイケ』での“極楽とんぼ”山本のキャラ“油谷さん”を思い出して腹が痛くなる位笑ったよ。でも本当に可笑しかったのは、誰が見ても「それは無いだろう」というシチュエーションなのに出演者は当たり前のように演技をしてるんだ。それこそ降臨した“B級映画の神様”の本領発揮かもね。

ライが父親の仕事の秘密をばらさないようにする為にフランクに輸送を依頼した設定になってたけど、それなら組織の人間が運んだ方がリスクは少ないと思し、中身を知られる事も無かったと思う。でもそれじゃ何も始まらないし、この映画も存在理由が無くなってしまうよね。

クライマックス近くでコンテナの上にパラシュートで降りてくる頃には呆れかえるより「それ行け。もっと行け」と思いながら見ていたよ。もう何でも有りの映画なのが分かったし、サービス・デーといえど、それなりにお金払って見てるんだから楽しまなくっちゃね。

コンテナ争奪のアクションはもっとビックリさせてくれるんじゃないかと期待していたのに昔から良くある手法で、目新しい物は無かったのが残念。もう1台のコンテナ車はどうなったんでしょうか? 1台のコンテナの中に400人近くを入れるのは無理な事のように見えたけどね。ライが父親を銃で撃つシーンは別の形で決着をつけて欲しかった。クライマックスが親殺しなんて、この映画にはそぐわないよ。

この映画を見終わった後、パンフで思いっ切りカメラ目線で写ってるリュック・ベッソンはもう駄目だなと思った。でも期待してた映画とは違った事は確かだけど、何故か腹が立って怒りがこみ上げて来る事は無かった。重箱の隅を付くような事はせず、細かい矛盾も気にしない。画面に現れる事が全てで、それを見て大笑いし、驚き、呆れ、そして突っ込みを入れる。娯楽映画の王道かも知れない。もしかしてそれを狙ったのかな、リュック・ベッソンは。そんな映画が許されていた時代は確かにあったと思うけど、今それを堂々とやられても困るよね。

最後に今回もパンフレットの中での意味不明な事を1つ。
パンフの初めの方の“INTRODUCTION”には『彼の身の回りはいつも片づいている。愛車のBMW735はつねに磨かれていて美しい。イタリア製のスーツに身を包んだクールな佇まい・・・』と書かれてあった。そしてパンフの終わりの方の映画評論家のページの“意外なアクション・スター候補生”には『そこにいるのは、これまで妙にチンピラ役が似合ったワーキング・クラス顔ではない。クリスチャン・ディオールのスーツに身を包んだ・・・』クリスチャン・ディオールってフランスのブランドだぞ。劇中では『BMW735を運転するのはイタリア人だ』という台詞もあったぞ。 ねぇ、不思議で意味不明でしょ。

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