2005-5-15 『インファナル・アフェアV』 INFERNAL AFFAIRSV 終極無間

インファナル・アフェア俺と何時も一緒にいる『映画大好き』な人の友人で、『香港映画が大好き』な人がいるんだ。その人からの頼みで『インファナル・アフェアV』の舞台挨拶付きのプレミア試写会に何通か応募してたらしい。結果は、努力もむなしく全て外れだった。

しかしその内の一通が招待券に当たってたらしい。『インファナル・アフェア』が素晴らしい出来映えだったので、俺の中では既に完結している作品になっていて、続編を見るつもりはなかったんだ。おまけに3部作の2作目って、結構重要な設定や背景が説明されてたり、ヒントがちりばめてあることが多いもんなんだ。だから2作目の『無間序曲』を見ていない中抜けの状態で見ることにかなりの不安を感じながら見に行く事になった。

映画が始まるまで時間があったので街をブラブラと歩いていると、これから90分間は聞き続けるであろう中国語をすれ違う集団が大声で喋っていたよ。


オープニングで下って行くエレベーターの両側の壁に仏像が写ってるのを見て、「何だ〜?」となったけど、『インファナル・アフェア』のオープニングも仏像が“ど〜ん”と映ってた記憶が微かにある気がする。そしてエンディングは印象深いエレベーターのシーンだった。ここで既にラウ/アンディ・ラウの人生が奈落へ落ちていくことを暗示していたのかもね。

物語が始まってすぐに気付いたのは、ラウの性格に変化が見られた事。マフィアからのスパイを必死になって見つけようとして、疑心暗鬼になってる雰囲気がよく出てたよね。

過去と現在の時間軸を頻繁に変えられることで、はじめはストーリーについていくのがやっとだったけど、過去はヤン/トニー・レオンの事。現在はラウの事。これがこの映画の見せ方だと分ってくると、頭も時間軸の動きと同時に切り替えることが出来るようになったよ。


ラウはチャンがヨン/レオン・ライと争って死んだ事で、ヨンをマフィアのスパイだと確信し、証拠集めに必死になる。ヨンもラウの追求を感じ、中国本土のマフィアの大物のシェン/チェン・ダオミンと何かを画策し始める。緊張感が高まったラウとヨンの間で何度か交わされた台詞が気になった。ヨンの「気をつけろ」そしてラウの「すまん。驚かせたか?」っていうものだ。何か別の意味や深い意味があるのかね?俺には最後まで判りませんでしたよ。

精神科医のリー先生/ケリー・チャンのパソコンを盗み、データとして入っているヤンの治療のカルテを読み続けるラウは、次第にヤンと同化をはじめる。人差し指でトントンと叩く癖を無意識にやったり、リー先生の手を何の前触れも無く掴んだりもする。それは現在のカットの中にヤンが頻繁に登場し始めたことでも分るよね。この辺りのヤンは幸せに満ちた顔をしていたよね。リー先生の診療室にいる時だけが心を解放出来る時間だったんだね。


孤立無援で潜入捜査を続けるヤンの、たった一人の味方はウォン警視/アンソニー・ウォンだけだ。マフィアの中では信用されてなく、危ない仕事ばかりをやらされていた。そんなマフィアでもキョン/チャップマン・トウだけはヤンを信頼し仲間だと認めてくれた。

でもヤンはそのキョンの信頼を裏切る形でウォン警視に情報を流し続ける。その情報を受け、ウォン警視は取引現場へ急行しようとするが、ヨンの横槍で中止を余儀なくされる。マフィアのボス、サムもきな臭いものを感じ取り、途中で引き返してしまう。香港マフィアから裏切られたシェンと孤立無援のヤンたちの銃撃戦が始まった。


遂にヤンとシェンは互いに向け発砲し、シェンは足に、ヤンは左手に銃弾を受け、怪我を負ってしまう。ピークまで高まった緊張感の中で、2人の前に現れたのは、ヨンだった。そしてシェンが言う「お前はサムの手下じゃないようだ」その意味を考えているヤンに向けて、今まで見せることが無かった笑顔をヨンが見せる。

「あー!やられた。見事にやられた!!」 シェンとヨンは絶対に悪人だと思っていたよ。シェンは過去のシーンでサムとの取引の場面があったし、ラウとリー先生と入れ替わりにヤンの墓地に現れ、携帯で「今、香港に着いた」「さあ、始めよう」だもんな。見事にインプットされましたよ。そしてサムと平気に会い、取引をしようとするヨンを見てこれまた、ヨンは悪徳警官だとインプットされた。そう、2人とも悪人だとね。いや〜、ホントやられたよ。

ヤン・シェン・ヨンの3人が身分と任務を明かし、タバコをくゆらせながら話し合うカットで、三国志演義の『桃園の契り』の場面が何故か俺の頭の中に唐突に浮かんだんだ。乱れた世を正すべく、劉備、関羽、張飛の3人が『生まれた時は違っても、死ぬ時は同じだ』と義兄弟の契りを交わす場面がね。俺がその故事を知ってるのは、NHKの『人形劇・三国志』を見たからなんだけどね。


その友情を誓い合うシーンでの事なんだけど、シェンが「北京語で喋ってくれ」って言う台詞があったよね。大学で履修した第2外国語が中国語だった、しかも北京語だったのに、俺は全く中国語が分らない。でも、「ああー、本土の人間か。だから北京語なんだ」位の事は知ってるよ。でも、アホのキョンはシェンと長い会話をするシーンがあったぞ。

俺と何時も一緒にいる『映画大好き』な人の友人の『香港映画が大好き』な人は広東語をある程度理解することが出来るらしい。その人が言うには、キョンはカタコトらしいが北京語を喋ってたらしい。らしいと言うのは、その人は北京語が分らないんだって、シェンとは逆だね。


一度は消却したテープが、再びリー先生宛てにヤンから送られてきた。入っていたテープをラウはヨンに突きつけ「このテープがスパイの証拠だ」言い放ちレコーダーの再生のスイッチを押す。流れ出す声はラウとサムの会話だった。周りを囲んだ者たちが唖然とする中、ラウはヨンに対し、「ラウ・キンミンはお前だ」「マフィアのスパイはお前だ」と言い張る。ラウは自分をヤンだと思い込んでいたんだ。

“カチャン・カチャン”と杖の音を響かせてシェンが現れるとラウはいきなりヨンの眉間に向けて発砲し殺してしまう。ここでラウは望み通り「明日が過ぎれば無事だ」と言ってたヤンと一体化したんだ。でも直後ラウは一方的な思い込みに過ぎなかった事に気づく。ヤンはシェンの足を、シェンはヤンの腕を、ヨンはラウの足を撃った。善の者は決して人を殺さないんだ。しかしラウは必ず眉間を打ち抜き相手を殺してしまう。その行為は悪そのものだった。

その事に気づき、我に返ったラウは自殺を図ろうとするが、“無間道”から逃れることは最後まで叶う事は無かった。血に染まり床に倒れるラウとヨンの姿を見るシェンの目は「何で、こんな事になってしまったんだ」という悲しみが一杯だったね。チェン・ダオミン演技上手すぎます。それに対してケリー・チャンの演技は・・・。こういう男の映画では言わぬが花かもね。


1作目の『インファナル・アフェア』からの命題は「俺は(ヤンに)なりたい」というラウの望みだ。何故ラウはヤンになりたかったのか? ヤン自身になりたかったのか?スパイとして警察官になりたくなくて、ヤンのように退学になりたかったのか? これに関しては俺は、単に『ラウは善人になりたかった』 多分『ラウの心の中でヤンが善人の象徴になっていた』という答えしか持ってない。答えが判らないよ。

1作目の『インファナル・アフェア』の時にも書いたけど、こんな難しい話をハリウッドでリメイクして大丈夫か?3部作通して流れるウエットな感じをハリウッドで表現出来るかな〜。まぁそれは俺が心配する事じゃ無いよね。

ラスト近くで、ヤンの墓に並び立つヨンの墓の前でリー先生にシェンが言う。「運命は人を変えるが、人は運命を変えられない。だけど彼らは何かを変えた」と、重い言葉を言うが、何か変えましたっけ? マフィアの組織を壊滅させ、スパイを一掃した事?俺には未だ皆、“無間道”にいるとしか思えないんだ。


マリーがラウの見舞いに訪れるシーンで、ラウに向かって拳銃を撃つ黒い服を着た人が、誰なのか判らないよ。上映終了後に、俺と何時も一緒にいる『無間序曲を見た』人に聞いたところ、「サムの奥さんのマリーだよ」「ラウはマリーを好きになった事がきっかけで裏社会に入るの」と言われた。ん〜。何故、拳銃を撃つのか? 深い訳がありそうだね。

ヤンが警察学校を出て行く。閉ざされる門扉。その門扉を閉めたのがヤンの代わりに主席で卒業したヨンだったとはね。出来過ぎな気もする。そしてラストカットで1作目の『インファナル・アフェア』の冒頭のシーンに戻るループで全てが終わる。誰もが思った事だろうけど、「ここからこの物語は始まりました」って事だよね。という事は、ラウとヤンの2人が出会ったのはこの時が初めてって事かい?2作目の『無間序曲』では出会わなかったの?

このカットの事を俺と何時も一緒にいる『無間序曲を見た』人に再び聞いてみた。「出会ってないのよ。すれ違ったりは何回もしてるが、1対1で会うのはこのシーンが初めて」だって。やっぱり2作目の『無間序曲』を見ずに1作目の『インファナル・アフェア』と3作目の『終極無間』だけで話をまとめるのはかなり無理があったね。


実は『インファナル・アフェアV 終極無間』が香港で公開された直後に、『香港映画が大好き』な人からDVDが送られて来たんだ。もちろん『インファナル・アフェアV 終極無間』がだよ。主要な登場人物のブックレット(by広東語)や写真がプリントされたマグカップが付いてたりの超豪華版DVDでした。

でもDVDを見ようとは全く思わなかった。だって香港版だよ。字幕があっても広東語に北京語なのは1作目の『インファナル・アフェア』で既に経験済みだ。何を言ってるのか全然判らないのは、なかなか辛い事だったからね。

ここまで一気に書き上げて、やっとパンフを読む余裕が出来た。ここまで詳しく物語を説明してくれるパンフは珍しいぞ。「やっぱ、そうなんだ」 「そうだったのか」「気付かなかったなぁ」 色んな思いが駆け巡りました。でもストーリーを初めから終わりまで書くのは止そうよ。映画を見る前にネタバレじゃシャレにならないと思うぞ。


『インファナル・アフェア』と『インファナル・アフェアV 終極無間』という面白い映画に出会えて嬉しかったよ。謝々、再見。

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