秩父で麺と猫写だ Episode1 Phantom Appetite 『見えざる食欲』

普段は朝遅くまで寝てる俺が、気合を入れて早起きする事が3つある。1つ目は野球を見に行く時。それもここ一番の大事な試合の時はとりわけ早起きする。2つ目はツーリングの時、必ず日帰りで行くから、春や秋は朝の4時、冬は5時、夏は3時に起きる。そして最後は旅行に行く時だ。今回は3番目の旅行にあたる。野球の日本シリーズでお金を使ったから旅行に行く予定は無かったんだけど、あんな結果になっちゃったから、今年も『V逸旅行』で秩父に行く事にした。題して『秩父で麺と猫写だ』でも早起きはやっぱり苦手だ。中々目が覚めない。

西武線池袋駅の弁当コーナーはコンビニチックな物ばかり置いてあったが、今年は少しまともな弁当が置いてあるようだ。でも旅行の主題の1つは麺。俺は『焼きソバロール』と『ナポリタンロール』を買った。当然ビールもね。俺と何時も一緒に居る『旅行大好き』な人はサンド・ウィッチとお茶にしたらしい。

AM8:30のレッド・アローが発車した後に、入れ替わりで入ってくる列車に乗ると旅行のスタートだ。ホームにはピューピューと北風が吹き込んできてすごく寒い。東京でこれじゃ、秩父はどれだけ寒いんだろう。目的の快速急行がホームに入ってきた。「?? クリーム色の車体じゃないぞ!もしかして・・・」 悪い予感は当たった。クロス・シートの座席じゃなくて横向きに座るロング・シートの座席だ。これじゃ通勤と一緒じゃないか旅の風情が出ないぞ。でも俺らは空腹だったからお構いなしに、バリバリと袋を開けプシューっとビールを開けた。食べやすいパンを買ってて良かった。

1年振りに降り立った西武秩父駅のホームにはエレベーターが新設されてた。そしてトイレが改装されてすごく綺麗になっていた。そうそう観光地はこうでなきゃね。駅前のコイン・ロッカーに荷物を入れ、身軽になって(思いっ切りの厚着なんだけどね)秩父の町へ繰り出した。まずは『わへいそば』で昼飯だ。その店には一度行った事があるし、秩父は何度も歩いた事があるので地図なんか見ずに感を頼りに歩く。気温は低く、吐く息は白い。空模様も機嫌が悪そうだ。

俺たちは路地角に差し掛かる度、その路地をじっと見る。そして歩き始める。猫を探しながら歩いていたんだ。だって俺は『路地裏猫探検家』で、俺と何時も一緒に居る『猫大好き』な人は『自称、キジ白愛好家(キジだく希望)』だからね。とある路地の奥に真っ赤な紅葉が見えた。「綺麗だ、ここ入ろうか」 一歩踏み出した俺らの前に“スタッ”と猫が現れた。「ぉあっ猫だ。首輪猫だ」 白い毛並みにグレーの縞模様猫。大慌てでカメラを取り出し「にーや、にーや」言いながら『猫写』した。中腰になって左手の人差し指を伸ばし、猫の鼻先に持っていた。そいつはクンクンと匂いをかぐ。その鼻に俺は人差し指をツンツンと着けた。鼻は冷たく、ヌルッとしてた。「やったー!」 『猫触わ』第1段階クリアだ。そいつは逃げない。第2段階もクリアだ。そっと頭をナデナデ。背中をサワサワし、尻尾まで握れた。「ナーゴ」と鳴きやがった。もう友達だ。何枚も『猫写』してると、そいつは「ついて来て」とばかりに歩き出した。途中途中でブロック塀に体をこすりつける。その度に俺たちは『猫触わ』した。そいつは急に人んちの駐車場に入って行き、体を舐めて毛並みを整えだした。「何だよ。触られるの嫌だったのかい? でも有難う。また会おうね」 俺らは手を振り今来た道を戻った。

見覚えがある町並みになって来た。『わへいそば』の近くまで来たようだ。去年『犬写』した犬も同じ所にいた。今年は冬毛でモコモコだ。当然今年も『犬写』した。『わへいそば』には二組の先客が居た。俺は『もりそば』とビール、俺と何時も一緒に居る『麺大好き』な人は『特製もりそば』を注文。『特製もりそば』はそばつゆにクルミ汁が入ってるんだ。相変わらず腰の強い蕎麦だ。コンニャクの様だ。蕎麦殻が付いたまま挽いた田舎蕎麦で蕎麦殻が口の中を刺激する。俺は蕎麦人じゃないから、比較はそんなに出来ないけど。ここの蕎麦はワイルドですごい存在感があると思う。旅先で昼間に飲むビールって何でこんなに美味しいんだろう。たとえそれがドライ・ビールでもね。今年も招き猫パワー炸裂!あっという間に満員になっちゃったよ。

店を出ると再び『猫写』開始だ。去年猫を見た辺りに行ってみるが、みんなハズレ。当たり前だよね。相手は猫なんだもん。人の都合通り行くはずが無い。『いのっち犬』も『遊んでくれ犬』もいなかったのは寂しかったな。今までに行った事がない『羊山公園』の方まで足を伸ばしてみたが収穫は無し。『犬写』ばかりだった。途中出会った黒いレトリバーは可愛いかったよ。自分のお気に入りのおもちゃを口にくわえて、俺たちに自慢げに見せに来た。

でもやっぱり猫を見たいから去年猫を三匹見た『御花畑』駅近くに行ってみた。「いたー。でも今年は一匹だ」 金目の仔猫のキジトラだ。毛がフワフワして可愛いい!。『猫写』だ。ここでも左手の人差し指を鼻の前に差し出した。クンカクンカと匂いを嗅ぐので、ツンと鼻を触ったらビックリしてちょっと離れた所に逃げた。でも俺らのことを興味深げに見てた。鼻は湿気ってたよ。その猫スポットの裏の草むらにも去年は猫が寝てたので覗いてみたら今年も寝てた。ちょっと距離はあったが『猫写』した。俺は叱られるのを覚悟して秩父鉄道の線路に入り裏に回って近づいて『猫写』した。ベッコウ柄の猫で俺らが通称“ムギちゃん”と呼んでる柄の猫だ。

『御花畑』駅から電車で『長瀞』に向かった。去年出合えた野良猫の元祖『ムギちゃん』と首輪猫『コウちゃん』を探す為だ。駅前で2匹を探すが、いる気配は無い。駅横の売店の裏を覗くと水は置いてあったのでどちらかは居るようだ。

今日はまだコーヒーを飲んでないので長瀞で唯一(?)コーヒーが有る店『イタリアンジェラートみやま』でカプチーノとカプチーノ・コン・カカオを飲みながら一休みした後は、ここ何年も変わらない岩畳に向かうメイン・ストリートから外れて裏町を散策だ。『長瀞グリーン・ホテル』の向かいにあるスナック街の一番手前の店の前で黒白猫を発見。『猫写』しようとしたら、「にやッ」と鳴いて逃げた。その付近を探していると、木が二股に分かれた所に、黒白で口の回りに髭模様が有る猫が寝てた。「こいつ去年も撮ったぞ」 近くに有る犬小屋は実は猫小屋で中には薄黒の親子猫がいた。その近くの植木には別の薄黒猫が身を潜めていた。去年ここを通った時には遠くに一匹の猫を見ただけだったのに、こんなに居るとは思っても見なかった。

俺らが『猫写』してるとホテルの駐車場に入ってきた車から女の人が出てきて猫の写真を撮ろうとズカズカ近づくもんだから驚いて猫は逃げて行った。「それじゃ駄目だよ」と何時も思ってしまう。アプローチの仕方が間違ってる。野良猫は基本的にすごく臆病だから。

黒白で口の回りに髭模様が有る猫(黒白海苔君)が通りを線路に向かって歩き出しだ。当然俺らも後について移動する。堂々とした歩き方だ。黒白海苔君は線路の中に入っていった。そして線路を横切る時、左右を確認して早足で横切って向こう側へ渡った。「ひぇー。あいつ賢いぞ」黒白海苔君は資材置き場の中でくつろいでいる。俺らも急いで踏切を渡りそこに行った。黒白海苔君はブロック塀の上に座ってた。猫の行動範囲は約200メートルと言う事を聞いた事がある。ここまでそれ位はあるようだ。猫の行動範囲って広いんだね。

長瀞の町をブラブラしてたら、周りの人が「SLだ。SLだ」と言ってる。特別に見たくも無かったが、暇だったので線路の方まで戻ると結構な数の見物人が居た。場所がないので先ほど黒白海苔君がいた資材置き場の方に戻っていると遠くからSLの汽笛が聞こえてきた。その音を合図としたかのように黒白海苔君がまた線路の方に歩いてきた。先程と同じように左右の確認をして線路を渡って行った。「ん〜偶然なのか、賢いのか」猫のやる事考える事はやっぱり分かりません。俺が思ってたより野良猫が行動的なのが分かった。

去年長瀞に行った時に『丹一』という名の蕎麦屋が気になり、入ろうとしたが閉店時間になっていて断念した事があったんだ。今回その店に行ってみたら、何が気になっていたのかハッキリしない。店の前に行けば思い出すと思っていたんだけど、全然駄目。店の売りは『きのこ汁』と『きのこそば』らしいが、俺と何時も一緒にいる『きのこ大好き』な人じゃあるまいし、きのこで心が動いたとは思えないんだよね。店に入ってメニューを見ても“ピピッ”と来る物は無い。俺と何時も一緒にいる『きのこ大好き』な人は『きのこ汁』と『おこわ』を頼んだ。俺の方は決定打が出なくて、何かを求めるように後ろを振り返った。壁に貼られたお品書きの『さらしだいこんそば』が目に入った。どんな蕎麦なんだ。イメージが湧かない。他に食べたい物が無いので、それを注文。そしてビールもね。

以前長野の小布施でパサパサに乾いたおこわを食べた話をしてたら、「おこわは蒸されて出て来る物だ」と俺と何時も一緒にいる『おこわ大好き』な人に言われた。テーブルに出て来たおこわは確かに蒸されていた。食べてみると柔らかくて栗も甘くて美味しかった。俺が食わされたおこわは何だったんだろう。『さらしだいこんそば』は蕎麦の上に千切りにして水にさらした大根が乗ってた。はじめはシャキシャキした食感だったが、時間が経つと蕎麦に大根の水分が垂れてベチャベチャになるのはちょっといただけないな。この店では招き猫パワー炸裂しなかった。それもそのはずで俺たちの入店と同時に閉店時間になり、表の明かりが消されてたからね。結局、去年気になってたものは何だったのか最後まで分からずじまいだ。

もう日が暮れてきたので列車に乗り『御花畑』に向かう事に。ところが駅に向かうメイン・ストリートから右手奥の道に、また猫発見。三毛の首輪猫だ。一枚だけだけど『猫写』出来ました。駅に着くとちょうど列車の到着の時間だった。車内には黄緑色のビニール袋を持った中高生が何人もいた。俺と何時も一緒に居る『映画大好き』な人が「あれ、ポッタリアンだよ」と言う。まさしくマイカル・シネマズの黄緑の袋だ。「そうか今日が初日か」 どうやら熊谷のマイカルに見に行ったらしい。凄いぞポッタリアン、秩父にも居たぞ。

西武秩父駅のコイン・ロッカーに入れてた荷物を出して、駅からすぐの国道140号沿いの『ホテル・ルート・イン』に向かおうとしたら、遂に雨が降り出してきやがった。去年までは野上の『西武長瀞ホテル』に泊まってたけど今回は駅から近くて楽で助かる。部屋でしばらく横になった後は晩飯を食う為町に繰り出す。ガイドブックで確認すると行く予定の『こいけ』は4時で営業終了だって。11時から4時までだそうな。すげぇ大名商売やってるよ。何回か行った御花畑の『珍達そば』に予定変更してフロントに降りると、『秩父そばの会蕎麦食べ歩き』とか『秩父まち歩きグルメマップ』そして『西武秩父駅周辺マップ』等のチラシが置いてあるじゃないか。さっそく手に取り近くの店を捜す。見付けると同時に『秩父でもっとも古い店』のコピーも目に入った。『そば処大むら本店』だ。「ここに行こう」 外は本格的一歩手前の雨の降り方になってる。秩父の夜は暗い。LEDライトで足下を照らしながら歩いた。本当はそこまでやるほど暗くはなかったけど、せっかく持って行ったから点けてみたかったんだよね。

そば処大むら本店』は、これ見よがしの店構えじゃなかった。普通の造りで寿司屋でも違和感が無い感じだ。サンプルが置いてある玄関横のショーケースを覗くと丼物も出してるらしい。でも俺は麺を食うつもりだから他のサンプルに目を移した。目に入ったものは『すごもり』 「俺はこれに決めた」 そして俺と何時も一緒にいる『山菜大好き』な人は、ここでも『きのこそば』を頼んだ。サンプルを見る限りは餡かけの堅焼きソバのようだ。目の前に出された物を見ても、餡かけの堅焼きソバのようだ。餡がかかってないところを食べると日本蕎麦の味がする。そしてこれは蕎麦だよとダメを押すように薬味の葱が付いてきた。揚げた蕎麦が鳥の巣をイメージしてるようだ。麺の上に餡がかかりウズラのタマゴが2つ乗ってた事から勝手に納得した。いやはや凄い物を頼んじゃったよ。味の方は、はっきり言って俺の味覚では濃い過ぎるの一言。生ビールがすすみます。餡の中に一本だけゲソが入ってたのがすごく意外で不思議だった。

俺と何時も一緒にいる『昔酒が大好きだった』人が頼んだ『蕎麦焼酎雲海のそば湯割り』も強烈な飲み物だった。一口飲んだだけで食道から胃に向かって焼酎が下って行くのが判る。そして蕎麦の匂いがプーンと広がった。結構効きました。もう閉店時間も間近なのに3組ほど客が入ってきた。ここでも招き猫パワー少し炸裂かな。今日はここで終わり。長い一日だったので、ホテルに帰って早めに寝ます。沢山食って、いっぱい飲んで、よく歩いて、本能の赴くまま『猫写』したぜ。また明日だ。

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