秩父で麺と猫写だ Episode2 Attack Of The Noodles 『麺の攻撃』

二日目の朝がやって来た。カーテンの向こう側は昨夜の雨がまだ残ってる。ちょっとブルー。ゆっくり目で起きたので朝食の時間が終わってしまいそうだ(普段はまだ寝てる時間)。バイキングなのでスパゲティくらいあるだろうと勝手に思っていたら、麺類は一切無し。ごま塩のお握りを1個と山盛りのサラダ、スープ、オレンジ・ジュース、コーヒーと水をテーブルに運んだ。俺と何時も一緒にいる『パン大好き』な人はトーストを頂いていた。

10時にチェックアウトし西武秩父駅のコイン・ロッカーに荷物を入れ、昨日と同様に身軽になって御花畑駅に向かう。列車がすぐ近くまで来てるぞ。ダッシュだ! 『秩父夜祭り』で立てられるであろう長い棒が横たわっていたが、ジャンプ一発飛び越えた。改札を抜けるのと同時に列車がホームに入って来る。ラッキー、待ち時間ゼロだ。今日は朝一で三峰神社の麓の『大輪』にある『車澤うどん』でうどんを食べるんだ。ここからも結構遠いけど秩父に行った時は必ず行くようにしてる。

『三峰口駅』に向かう途中の車中から、SLを撮る為に何人もの列車マニアが線路脇でカメラのセッティングをしているのが見えた。今日が今年最後のSLが走る日らしい。三峰口駅前には『急行 三峰神社行き』のバスが止まっている。急行バスなら最初に止まる駅が目的地の大輪だ。そして雨も降ってない。運の良さを感じた。「多分このバスは西武秩父駅に着いた時に入れ代わりに出て行ったバスだ」俺たちは『秩父フリーキップ』で移動してるから列車を使った方が安いんだよね。

三峰神社入口近くの鄙びたお土産屋を覗きながら荒川に架かる『登竜橋』の上で紅葉景色を堪能した。荒川は遥か下を岩を削るように荒々しく流れている。じっと見てると遠近感がおかしくなる気がする。登竜橋は最近ペンキを塗り変えられて真っ赤っだ。参道横の柵も新しくなって擬宝珠が金色に輝いていた。同じバス停で降りた人たちはロープウェイ乗り場に続く、きつい上り坂を上がって行くが、俺らは橋を渡った所にあるお土産屋で『中津いも』を買うつもりでいたけど店が閉まっていたので、そこでUターンした。去年も閉まってたけど、もう止めちゃったのかな。

国道140号沿いの『車澤うどん』に入ると今年も一番乗りのようだ。俺は少し迷ったが『天ぷらうどん』とビールの中瓶。俺と何時も一緒にいる『山菜大好き』な人は今年も『きのこ汁うどん(つけめん)』にした。「ねぇ、去年もそれ食ったし、昨日の昼からきのこばっかりじゃん」 「いいの。食べると幸せな気分になるの」だってさ。天ぷらうどんは『天ぷら』と『うどん』で出て来た。“天ぷら On the 麺”だとばかり勝手に思い込んでいたから、ちょっとビックリ。

出て来た天ぷらは野菜の天ぷらで“カボチャ・エンドウ・ナス・マイタケ”だ。実は苦手な物ばかり。でもここの天ぷらはどれでも食えてしまう。特にカボチャは甘くて絶品。ガツガツと食ってしまった。そんな風に悦に入ってる時に、男2人のハイカーが店に入って来た。「靴脱ぐの大変でしょうから、隣の囲炉裏の方へどうぞ」と店の女の人が声をかけてる。「へぇー、何度も来てるけど囲炉裏があるのは初耳だ」

腰が無いうどんを食べてると、食い終わる頃に汁の中にうどんクズが出てきて汁が白く濁るのが嫌なんだ。ここのうどんは一際腰が強く、最後まで汁が綺麗なままなのが嬉しい。うどんを堪能した後は、バスの時間に合わせて店を出る。勘定の時に「三峰神社は行きました? これから?」と聞かれたので「うどんを食べに来ました」と言ったら、一瞬驚いた顔をした後に丁寧に御礼を言われた。いいんですよ笑ってくださってもバスだけで往復600円も使って来るお馬鹿たちですから

三峰口駅に戻るバスは各停の『リズム・バス』だ。リズム・バスはバス停以外でも乗り降りが自由で、歩いてる人の後ろからバスが来ても分かるように音楽を流しながら走っているんだって。三峰口駅にはすでにホームに列車が入っていた。発車時間まで後少しあるけど、これも一応待ち時間ゼロかな。

これから一気に長瀞まで移動だ。車内は暖房が効いている。シートも暖かく気持ちが良い。俺と何時も一緒にいる『睡眠大好き』な人は2つ3つ駅を過ぎる頃には寝ていた。俺も浦山口駅辺りで眠りに落ちた。お腹はうどんとビールでポカポカだ。たとえそれがドライ・ビールでもね。

おおっ!猫だ。5〜6匹いるぞ。寄り固まってるぞ。みんな可愛い!」 「ねぇ、長瀞に着いたよ」肩を叩かれた。 「うにゃ?今、猫がいっぱい居た夢を見てた」 それを聞いた俺と何時も一緒にいる『猫大好き』な人は「うにゃっ!!」と言った。

今日は岩畳の方へは行かずに『宝登山』に向かうんだ。でも駅前で“ムギちゃん”と“コウちゃん”はしっかりと捜した。でも今日も出会えなかった。ちょっと悲しい。国道140号の交差点に立つコンクリートのでっかい鳥居をくぐって上り坂を歩く。そのまま真っ直ぐ行けば『宝登山神社』だが、俺たちの目的地は去年宝登山の駐車場で遊んでもらった白三毛猫と宝登山山頂で見かけた黒白猫と白黒猫に会いに行く事なんだ。

『ガーデンハウス有隣』の角を曲がって坂を上れば宝登山の駐車場だ。俺は何も考えず角を曲がった。俺と何時も一緒にいる『猫大好き』な人が「うにゃ」と言って立ち止まった。猫を見つけた時の叫びだ。「猫、何処?」 植え込みの中に猫がいた。シロだくのキジ白猫だ。そしてまだ仔猫。 『猫写』しようとするが植え込みが邪魔。コンパクトカメラじゃピントが合わない。俺らはガーデンハウス有隣に入り、勝手に庭の方へ入って行って『猫写』した。ご免なさい。次来た時はお店に入って何か頼みます。その仔猫は敷地内の建物の床下に入って行った。近くに餌と水が置いて有る。「良かった 『食住』が確保されてれば安心だ」 また会おうね。

駐車場が見えてきた。同時に白三毛猫が歩いてるのも見えた。「やったー。今年も会えたぞ」 白三毛猫は駐車してる車の間を気ままに動きながら駐車場の奥へ、奥へと移動してる。こうなると俺らは『猫写マン』になる。『路地裏猫探検家』は車の後ろの方から、『自称、キジ白愛好家(キジだく希望)』は前の方から『猫写』した。俺の視線の先にある斜面を黒白の猫が走ってる。どうやらこっちに向かってるみたいだ。俺は「あそこにも猫」と言いながら目線を駐車場の奥へ写すと3匹の猫がくつろいでいた。「向こうにも居る!」 去年は一匹の猫にしか会えなかったのに今年はどうなってるんだ。すぐ近くまで近寄り『猫写だ』 周りを見渡すと他にも居る。落ち着いて数えてみた。始めに見た『白三毛猫』・走ってきた『黒白猫』、くつろいでた『茶白猫』・『キジトラ猫』・『三毛キジ猫』そして『薄い色したキジトラ猫』が2匹。合計7匹だ。一気にアドレナリン放出で体が熱くなってきた。『自称、キジ白愛好家(キジだく希望)』が言う「ねぇ、正夢じゃないの?」 俺もそうとしか思えない状態になった。「これか! これだったのか!!」 これこそまさしく天啓だ!! 嬉しさと驚きで涙が出そうになった。

黒白猫が一番愛想が良い。俺らの足元にやって来て俺らを見上げている。可愛いぞ。鼻の前に指を持っていくといきなり頭を擦り付けてくる。一気に『猫触わ』第3段階だ。そいつは「ナー」と鳴きながら体を俺たちの足に当てたり擦りつけたりする。極めつけは、服従のポーズで地面に横になり腹まで見せた。他の猫も時間を掛けると茶白猫や薄い色したキジトラ猫も触らせてくれた。餌が欲しいのは分かるけど今日はそんなに沢山は持ってないんだよ、ご免ね。とりあえず手持ちの分はあげたけど、その猫数じゃ足りないよね。そして俺らはシャッター押しまくりで大慌てでフィルム交換の繰り返しに追われた。

ここに誘ってくれた白三毛猫は近くの『長瀞不動尊(なでしこ寺)』の斜面の黄色と赤に色付いた落ち葉の上でくつろいでる。俺が近づいて行くと「ニヤー」鳴きながら落ち葉の上を歩きながら、山道を奥の方へと移動して行く。俺が「何処に行くんだよ」と言いながら後を付いて行くと、白三毛猫は胃の調子が悪いのか草を食った。そして腸は快調なのかウンチしたりしながら、もっと山奥へ入って行く(ウンチは隠せよな)。「俺、もう帰るからね」と言って戻ろうとすると、「ニヤー」と鳴いて振り返る。「何してんだよ、道に迷うぞ」と言いながら近づくと、また山奥へ歩いて行く。猫の考えは良く分からないや。

昨日は『線路渡り猫』の行動範囲にビックリしたけど、ここの猫は予想を遙かに超えた行動範囲を持ってる。だってねぐらの駐車場入り口の売店から、どう見ても直線で500メートルは有る。本当に凄いんだね猫の行動力は。動物学者の先生はもっとフィールド・ワークの範囲広げた方が良いかもよ。ここにこんなに凄い猫が居るんだもん。

山道から降りてくると、まだ猫たちはいた。『自称、キジ白愛好家(キジだく希望)』も猫との逢瀬を満喫していたようだ。ここにずっと居たかったけど俺たちにはまだ目標が有る。宝登山山頂の猫に会いに行くんだ。

宝登山ロープ・ウェイは今日で3回目になるが過去2回は『もんきー』という名のゴンドラだった。やっと今年『ばんび』に乗れた。でも何も変わらないんだけどね。行楽シーズンなので満員なのは仕方がないけど、酔っぱらいのオヤジがバスガイドになった気分でアナウンスを何度も繰り返していたのには呆れたよ。

山頂に着くとほとんどの人はそのまま道を進み『宝登山動物園』か目の前の『蝋梅』を見に行く。俺たちは左奥くのスペースを目指した。「いたー。黒白猫だ」 ベンチの上で体なめてるぞ。「こんにちは」と声を掛けると同時に『猫写』だ。何も動じないぞ。頭をグリグリ触っても平気だ。いきなり『猫触わ』の第4段階だ。俺らは一度その場を離れて『白黒猫』を捜した。でも見あたらないんだ。何処に居るんだろう? 黒白猫のところへ戻るとそいつはオバサンと戯れていた。でもオバサンにとっては一過性のものらしく何処かへ行ってしまった。そこにいるのは俺らだけ、ベンチに座り「ここにおいでよ」と、なにげに言ったら黒白猫はいきなり俺の膝の上に乗ってきた。乗ってくれるのは嬉しいけど、「あんた肉球汚れてるでしょ」 案の定俺のマウンテン・パーカーに肉球の跡が付いた(俺らは『肉球スタンプ』と呼んでる)。

これ位何て事無いですよ。猫が膝に乗ってくるなんて猫好きにとっては最高に幸せな事。ましては相手は野良猫だもんな。そしてそいつは俺の膝の上で寝やがった。出会って10分くらいだぞ。もうこうなったら俺は動けない。下手に動いて猫が臍を曲げる位なら、我慢する方がまし。猫も暖かいかもしれないけど、膝の上に乗せてる俺も暖かいんだよ。猫の幸せは猫好きの幸せだ。それにしても気持ちよさそうに寝てる。「グルル、グルル」と鼾まで聞こえる。深く考えず座った俺のお尻はかなり冷たいぞ。昨日の雨で濡れたベンチに座ってるんだ。それも木のベンチ。まぁ尻が汚れた位なんて事無いですけどね。野良猫が膝に乗ってくる幸運に出合えた事に比べればね。

最初は普通に丸まって寝てたのに、俺が体を撫でてると何時の間にか横になって寝てる。そして熟睡しやがった。寝てる形がアンモナイトの様だ。目の形が『八』を逆さまにした様になってて、それを見た時は可愛くて笑ってしまった。俺は寝てる黒白猫の耳や鼻や尻尾や肉球を触りまくった。体の大きさに比べて小さめの耳を触ると“ピクピクピク”と小刻みに動かすのが可愛くて何度も触ってピクピクさせた。『自称、キジ白愛好家(キジだく希望)』も猫を触って幸せな気分になっていた。黒い毛の中に白い毛が混ざっているのは白髪なのかな? 結構年寄りかも知れない。でも野良猫にしては肉も付いてるし筋肉もしっかりしてる。なんと言ってもお腹が出てて堅かったからね。食い過ぎじゃないのか。きっとロープウェイ山頂駅の人に可愛がってもらってるんだね。それだけで俺は安心さ。

もう40分以上も俺の膝の上で寝てるぞ。霧が出て回りの景色が霞んできた。『自称、キジ白愛好家(キジだく希望)』は「すっごい霧! 下界の景色が見えなくなってきたよ。凄いよ、これっ」と言ってるけど、俺は膝の上に猫を乗せてるから身動きが取れないって。そうこうしてる内に再び景色が見えるようになった。その間中猫の体を撫でてたもんだから、俺の顔の前を猫毛が漂いだした。俺は猫は大好きだけど猫毛が苦手。クシャミが出て、口の中が痒くなるんだ。そしてずっと同じ姿勢で座っている俺が限界に達してきた。それに今から行動しないと帰れなくなるからね。寝てる黒白猫を抱き上げて隣に下ろした。「もう帰るよ。ありがとう。元気でな」 答えの代わりにそいつは大きく伸びをした。当然『猫写』しましたよ。次は『白黒猫』にも会いたいな。

帰りのロープウェイも『ばんび』でした。麓に降りると地面が濡れてる。山頂で霧に巻かれていた時は、下では雨が降っていたらしい。駐車場の先程の場所に猫たちは居なかった。雨を避難する為何処かに移動した様だ。でも俺らは黒白猫を捜し出し、その黒白猫にサヨナラを言った。白三毛猫はいなかった。まだ山の中で遊んでるのかな。

長瀞駅へ向かう途中に去年気になったが時間の都合で入れなかった『うるし工房やました』という和風喫茶で休憩した。窓際のテーブルに座りコーヒーを注文。ついでに『わらび餅』もね。別に景色も良くないのに窓際の席に座ったのは、入口の横に毛の長い犬がいる事を知ってたからなんだ。俺たちが入った時は1組しか客がいなかったのに、俺らが入った後から続々と客が入って来る。入口のチャイムが「ピンポーン、ピンポーン」と鳴りっぱなしだ。殆んどの人が抹茶とわらび餅を頼むが、抹茶って美味い?おまけに粉茶だろ、あんまり美味しくないと思うけど。飲むんだったら本物を味わう方がいいけど、本物の抹茶なんか素人が手を出す物じゃない。すげぇ味で飲めたもんじゃない。ここでも招き猫パワー炸裂だ。

長瀞駅前の広場でみたび元祖『ムギちゃん』と首輪猫『コウちゃん』を捜したけど今年は遂に出会えなかった。来年も多分来ると思うから、その時には俺らの前に現れてね。カップルからいきなり手渡されたカメラのシャッターを押して喜ばれた後、駅舎へ入り時刻表を見るとドンピシャのタイミングだ。またまた待ち時間ゼロだった。列車の中では今日も目の前に『ポッタリアン』が座ってたぞ。西武秩父駅前は帰り支度の人たちで混み合っていた。

今年は列車ダイヤが変わっていて5時台の快速急行が無いから6時台のレッド・アローで帰る事にしてたんだ。特急券を買おうと自販機の前に並んでいると5時台のキップは売ってるが6時台のがよく分からないので、近くにいた駅員に「6時台もこれで買えますか?」って聞いたら「これじゃない。向こうの窓口だ!」っていきなり俺の前に並んでたオヤジが振り返って言った。唖然とする俺に駅員が「これで大丈夫」とフォローを入れるとオヤジは「そうなのか」とか言いやがった。どうして赤の他人に対して自分が知らない事をハッキリと断言するのか、俺には理解できないぞ。あっ!だからオヤジなのか。

特急券を手に入れた後は『ヒップ・ホップ』で『しゃくし菜のペペロンチーノ』と『明太とキノコのスパゲティ』とここでもビールを注文した。旅先で飲むビールは格別だからね。そしてここでも俺らが入ると何人も何組も客が入ってきたぞ。俺らはいつもは冗談で招き猫パワーとか言ってるけど、ここまで来ると偶然とは思えなくなってきた。

夕飯が済んだ後はレッド・アローの時間まで『仲見世』を覗いてお土産の品定めだ。俺と何時も一緒にいる『お土産大好き』な人は幾つも買っていたが、俺は後を付いてウロウロしたり、ベンチに座ってタバコを吸ったりして時間を潰した。そろそろ秩父ともお別れの時間だ。コイン・ロッカーから荷物出し、駅前の屋台で焼きソバを買って缶ビールを買えば準備OKだ。しかし既に屋台は店じまいしてた。今年は1時間遅い事を忘れていたようだ。ガックリ。それでも意地汚く缶ビールは買ったよ。レッド・アローの改札口の横にハンバーガーや焼きソバの自販機があったが、時間に余裕が無いので後ろ髪を引かれながら列車に乗り込んだ。

たかが620円の特急券を買っただけで快速急行とは大違いの列車の旅になった。暖房も効いてるしシートの座り心地も良い。快適、快適。そんな風に少しだけリッチな気分に浸ってると短時間の間に2杯飲んだビールが回って気付くと池袋に到着してた。やっぱり東京は暖かいんだね、そしてすごくうるさい。明日から又この街での生活が始まります。

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