青春の味『いごや』

 

高校生の頃、土曜日や試験で学校が午前中に終わる時に必ずといっていい位通っていたお好み焼き屋へ十数年振りに行った。店構えは昔のまま、時が止まってるというより、時間が逆行したかのようだ。

実は8月に、この町を歩いた時に前までは行ったんだけど、季節は夏だ。目の前で熱を持つ鉄板を相手にして食べる気が湧かずに懐かしさに浸っただけだったんだ。お好み焼き屋の周りは高校生の頃と景色が一変していて、その時は見つけるのに苦労したよ。おまけに見つけたのは俺じゃなくて、俺と何時も一緒にいる『美味しい物大好き』な人だったのが笑えるよ。


今回は懐かしさを舌でも味わおうと店内に入った。椅子やテーブルはその当時とは違っていたが、雰囲気はそのまま残ってるみたいだ。4人掛けのテーブルに座り、注文を取りに来たおネエさんに「あのー、俺、高校生の頃よくここに来てて、今日久し振りに来たんです」と言うと、「あかーさん!おかーさん!十数年振りだってー」と奥の方に向かって大声で叫ばれてちょっとビックリだ。

「今来ますから、その前に注文を」と催促されたので、俺と何時も一緒にいる『美味しい物大好き』な人が、「何にするの?」と聞くが、俺は昔から『モツ玉』しか頼まないから、それを注文した。「そうですね、昔は皆さん『モツ玉』を頼んでたみたいですねぇ」「なあ、嘘じゃないだろう」と笑っていると。奥からオバちゃんが出て来て、「あんた高校はそこね?」と、すぐ近くにある高校の名前を出したが、残念ながら俺はそこまで頭は良くないので、「○×高校だよ」と言うと、随分以前に路面電車が廃止になって通学ルートが変わったので俺の後輩はこの店に来る事が無くなったと、話をしてくれた。悲しいな。


そして当時はオバちゃんだったけど、今見るとオバアちゃんになってた。俺から見ればオネェちゃんが店の客の高校生からオバちゃんと呼ばれていたよ。これも時の流れだね。とりあえずお好み焼きを焼く事にしましょうか。

同じテーブルに座った女子のお好み焼きを焼いてあげて、ひっくり返すのが男子の役目みたいな、どうでもいい俺たちなりのルールの様なものがあった。上手く焼けない奴は格好悪い奴と言われてたよ。

俺はそこそこは上手く焼く事が出来てたから、そんな風に言われた事は無かったよ。もちろん今日は、俺と何時も一緒にいる『美味しい物大好き』な人のお好み焼きを上手にひっくり返してあげましたよ。


そして俺たちなりの焼き方もあった。両面を焼いたらソースをたっぶりと塗り、青海苔と魚粉を大量に乗せひっくり返し念入りに焼く。上になった面に同じ様にソースを塗り、青海苔・魚粉を乗せ再びひっくり返す。それを数回繰り返すと見かけは厚みが倍になったお好み焼きが出来上がるんだ。

今日もそれにチャレンジしてみたが、ソース・青海苔・魚粉が焼けるニオイの濃厚な事・・・逆に食欲が無くなりそうなので裏表一回だけで止めました。高校生の頃は少ない小遣いで腹が一杯になるグッド・アイデアだと思っていたけど今思うにアホなだけだったようだ。


12月だどいうのに今日は暑すぎるよ。おまけに目の前に熱せられた鉄板があるから暑さが倍増だ。たまらず、ビールを頼みそうになったけど、中高生相手の店にそんな物置いてる分けが無い。冷たい水をカブ飲みしてしのぎました。それからもオバちゃん(オバアちゃん)と昔話に花を咲かせました。また来ますから元気でいてね。

外に出て涼んでいたら、気になる黒い固まりを発見した。じーっと見ると猫でした。やったー! おーっ近寄ってきたぞ。今から『猫写』の開始だ。

 

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