火事の記憶とトラウマ

 

去年の大晦日に、動かなくなってしまったバイクのパーツを買いに行った帰りに、俺と何時も一緒にいる『散歩大好き』な人と待ち合わせをして、成増の町を歩いていたら、サイレンを鳴らしながら消防車が、目の前の角を曲って行く。「火事だ。近くだ」俺たちも急いで角を曲った。細い道に何台も消防車が止まり、消火活動をはじめようとしているところだった。


すぐ目の前に建っている民家からうっすらと煙が出ていた。すでに隊員が中に入っていて、ライトを点けて点検している。あんまり殺気立っていないので、火事ではないようだ。良かった。良かった。俺たちはよく散歩をするので何度かこういう場面に出くわした事があるが、全て誤報か勘違いで、悲惨な場面を見なくて済んでいる。でも、俺には子供の頃に火事に対して強力な記憶があるんだ。


小学校の低学年の頃、隣り町から火が出た。2階の窓からその方角を見ると、夜空が真っ赤になっていた。俺は父親がこぐ自転車の後ろに乗って、火事の現場に向かったんだ。目の前が全て火じゃないかと思えるほどの勢いで炎が暴れている。“ゴーゴー”という音と共に“パチパチ”と夜空に火の粉が舞い上がり、“バキバキ”という轟音がしたかと思うと、家が崩れ落ちていったんだ。顔と体が熱かったけど、金縛りのように立ちすくんでいたらしい。


それから数年後、小学生の4年の頃、中学生の親戚とその友達に連れられ、炭鉱の社宅の裏山の畑のような場所で遊んでいて、軽く掘った穴の中に虫を入れて、それを焼いてみようとガキ大将が火の点いたマッチを近づけたんだ。冬で空気が乾燥していたからだと思うけど、穴の周りの枯草に火が移って“パチパチ”と燃え出した。足で踏んで消そうとしたが、あっという間に火が大きくなり雑木林へと燃え移った。

それから先は夢を見ているようだったよ。社宅から何人も人が飛び出し、火を消そうとするが、火の勢いは益々強まり“ゴーゴー”と音を立て山を燃やしはじめた。町内放送のスピーカーから「山火事発生!山火事発生!!」と叫ぶ声が大音響で流れ、消防団も急ぎ到着し、ホースで水を撒き始め、バケツリレーもはじまった。

鎮火した時は山の半分が焼けていた。その時の恐怖がトラウマになって、小学生の6年までマッチを擦る事が出来なかった。


俺の親族は風呂を空焚きして火事になり、目の前でプロパンが爆発して、家が全焼した。大学の時の友人は隣りからの貰い火で家を失った。火事は本当に怖いよ。俺はタバコを消す時、何度も火が消えたか確認する。周りから「そんなに気になるなら、タバコ止めれば」と言われてしまう位だ。止めれば心配事が1つ減るのは十分に分かってはいる。本数を減らす様にはしてるけど、なかなか止めるまでには至らない。それまでは、もっともっと火には注意だな。

1つ過去へ←<< 2004-01-03 >>→1つ未来へ

『ダブル・ラッキー』へ 『健康法師の庵』へ